【家族代々のホットロッド】1934年製レオ・フライング・クラウドをレストモッド 後編

公開 : 2020.06.28 16:50  更新 : 2022.08.08 07:39

400psのV8エンジンにフォード製リアアクスル

いまレオ・フライング・クラウドに立つと、その苦労は伺いしれない。ツイン排気に太いタイヤ、高めの車高を除いて、一見すると新車時のままの姿にも見える。

もともとのボディ色はグリーンだったが、アル・パークスはオールドブラウン・レオの思い出に沿って、味わい深いツートーンを選んだ。インテリアは、明るい色味を中心にコーディネートされた。

レオ・フライング・クラウド 170デラックス・クーペ(1934年)
レオ・フライング・クラウド 170デラックス・クーペ(1934年)

ダッシュボードには、1930年代生まれを感じさせる雰囲気が残る。父のドン・パークスは、リアウインドウの巻き上げノブも再制作した。

ボディに隠された構造部分は、現代性を増した内容になっている。大幅な改良を受けたシャシーは、ラック・アンド・ピニオン式のステアリングに、ダブルウイッシュボーン式のフロントサス、ディスクブレーキが備わっている。

アメリカを離れる前、アル・パークスは、リビルドされたV8エンジンと油圧3速ATを調達した。再塗装を受けたシャシーには、ホッドロッドの定番といえる、フォード製のリアアクスルが組んである。木製のフロアは、60年を経ても良好な状態だった。

「V8エンジンは、テキサスのショップでチューニングしてあります。400ps以上もあって少しやりすぎですが、運転はしやすいです」 サウンドも素晴らしい。燃焼音を遮るのは、ストレート構造の小さなサイレンサーだけだ。

家族へ引き継がれるフライング・クラウド

より大きなパワーを求めると、マフラーからは弾けるようなサウンドが炸裂する。112km/hでのクルージングも楽しい。

高速道路を走ると、違和感が面白い。1930年代風のアールデコ・スタイルなボンネットが運転席の前に伸びる。クロームメッキのヘッドライトに映り込むのは、隣を走る現代的なクルマの姿だ。

レオ・フライング・クラウド 170デラックス・クーペ(1934年)
レオ・フライング・クラウド 170デラックス・クーペ(1934年)

1934年製のレオ・フライング・クラウドは、現在4台しか残っていない。別のレオを見るには、かなりの距離を移動しないと難しい。貴重なクラシックカーのレストアとして見れば、物議を呼ぶ内容ではある。

このレストモッドに眉をひそめるか、拍手を送るかは、アメリカの自動車史や文化をどう受け止めるかによるだろう。1920年代前半に誕生した自動車産業か、映画、アメリカン・グラフィティに代表するようなホッドロッド文化か。

リオは、ホッドロッドとしては間違いない内容に仕上がっている。加えて、元の状態に戻せないレベルにまでは手が加えられていない。ちょうど中間というところだろうか。

アル・パークスはクラシックカーとしての側面を、あまり重視していない。彼の使命は、次の若い家族のために、フライング・クラウドを引き継ぐことだと考えている。

今はまだ、自身の手の中にあるレオ・フライング・クラウド。子を持つ親として、オールドブラウン・レオの鍵を渡したい相手は決まっている。その日が来るのを、レオも楽しみにしているに違いない。

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