【進む巨大化】クルマの大型化を止めるには 

公開 : 2020.07.17 05:50

バッテリー技術を向上させる

電気自動車の航続距離や、バッテリーパックの重量を気にしなくて良くなるまでには少なくとも10年は必要だろう。とはいえ、その時は確実に来るのだ。

リチウムイオンバッテリーの容量は陰極の構造を変化させることによりここ10年間でおよそ2倍に向上しており、エネルギー密度で考えても1kWh/kgに近づいている。そしてその価格はおよそ1万円/kWhの水準になりそうだ。

現時点では非常に重いバッテリー
現時点では非常に重いバッテリー

次の焦点となっているのは陽極だ。これを現在のグラファイトから、グラファイトとシリコンの混合物に置き換えることが検討されている。これが成功すれば、バッテリーのエネルギー密度は再び2倍、もしくは3倍にまで増えるかもしれない。

この時点からバッテリーパックの大きさや重量が小さくなり、クルマ自体の大きさも小さくできるようになるだろう。

クルマの設計思想を変化

われわれは欲望に支配されすぎているのかもしれない。公道からSUVが減ればより走りやすくなると考えるひとがいるのと同様、皆がクルマ好きというわけではないのだ。

クルマに興味がないひとが自分のクルマを決めるのはより実用的な理由に基づいていることが多い。とはいえ、そんなクルマが市場に多く出ていないのであれば、選びようがないだろう。

デザインで室内空間が犠牲に
デザインで室内空間が犠牲に

デザイナーはクルマがファッションや家電製品とは異なることを認識すべきだ。ダイナミックな外装よりも、広い車内空間や機能性を重視するひとも多いのである。

このような変化はマーケット主導で起こるべきだが、そんな適切な優先順位を持った選択肢が存在しなければ起こりえないだろう。簡単に言えば、大径ホイールや複雑な造形、それに流麗なルーフラインなどといった外観のために犠牲になるインテリアスペースが大きすぎるのだ。

エンジンをモーターに

これはわれわれのコミュニティにおいてもしばしば炎上の元となるテーマだ。クルマ好きは往往にしてレシプロエンジンが大好きなのである。

とはいえ電動モーターの方が小さく軽く、車両への搭載が容易なのだ。そして出来が良く環境にも優しい電気自動車が市場に続々と投入されているではないか。

アストン マーティン製6.0L V12
アストン マーティン製6.0L V12

実際にこれらは内燃機関搭載モデルよりも小さいだろう。ただし、現時点では車重に関してはそうとは言えない。

シンプルさを再評価

われわれがプレミアムブランドに求めているものは多い。中でも先進技術を満載するためにクルマは肥大化せざるを得なくなっている。

しかし、クルマの本質に立ち返って、われわれが買うべきクルマ像を再認識することも必要なのではないだろうか。

BMW X4
BMW X4

新興ブランドの多くは従来のプレミアムブランドやラグジュアリーブランドがここ30年間に付加してきたコストや複雑さを廃してきている。これによるサイズの縮小や軽量化はエネルギー効率の向上にも役立つのだ。

しかしこれは古参ブランドにとっても市場におけるシェアを取り戻す良いチャンスだと言えるだろう。

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