【詳細データテスト】BMW X7 小型車並みの制動距離 リムジン並みの静粛性 ハンドリングと乗り心地のバランスも上々
公開 : 2020.09.19 11:50 更新 : 2020.09.22 05:54
意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆
X7は、すでに定評のあるX5の兄貴分で、どちらもアメリカ・サウスキャロライナ州スパータンバーグ工場で生産される。北米市場での成功を見込んで開発されたことは想像に難くない。
実際、X5と比べてどれくらい大きいのかというと、全長は30cm近く、全高はおよそ5cmほど上回る。ウェイトは、同等のグレードならおよそ200kg重い。
プラットフォームはクラスター・アーキテクチャー(CLAR)と銘打たれる、BMWの大ぶりなエンジン縦置きモデルのベースとなるコンポーネンツ。それをもとに構成されるモノコックは、アルミと高張力スティールを用いる。
こうした重量軽減が見込めるマテリアルを使用していながらも、テスト車の実測重量は2583kgに達する。これは、高級SUVとしても、許容範囲の上限といえるだろう。これよりGLS 400dは重いが、12気筒を積んだベントレー・ベンテイガはわずかながら軽いのだから。
GLSと同じ7座を標準仕様とするのは、X5との大きな違い。そのうえ、3列目の2座は、一般的な体格の大人も不満を覚えない快適性をもたらすという。その点は、追い追い確かめていこう。
X5ではオプション設定となるセルフレベリング機構付きエアサスペンションも、X7には標準装備。高級車市場において、空気バネを好むライバルが多いなかで、いまだにコイルスプリングを重用しているBMWとしては珍しい。
その採用の大きな動機は、車高調整を重視したこと。通常時の最低地上高は221mmだが、乗降や積み下ろしを容易にするべく、40mmダウンが可能。また、悪路ではさらにアップすることもできる。
今回テストするM50i Mパフォーマンスには、サスペンションに専用チューンが施される。また、4WDシステムには、電子制御トルクベクタリング機構を持つリアディファレンシャルも組み込み済みだ。
インテグラルアクティブステアリングと銘打たれたオプションも、テスト車には装備されていた。これは、高度な制御の可変レシオステアリングと、速度感応式アクティブ4WSを統合したものだ。
エンジンは4395ccツインターボV8のN63型で、530psと76.5kg−mを発生。最大トルクは、Mモデルに搭載される兄弟版ユニットのS63と同等だ。
M50dのB57ことターボを4基掛けした3.0L直6は、ガソリンV8を上回る77.6kg-mを発生するが、ユーロ6dエミッション規制をクリアできないため、今月いっぱいで生産終了される予定だ。
速いディーゼル車のファンは、48Vマイルドハイブリッドとシーケンシャルターボを備えた直6ディーゼル群の一角として復活することに期待しているだろう。
しかし、ミュンヘン方面からの情報では、4ターボのB57D30S0は複雑で生産コストがかかりすぎ、しかもBMWが許容する以上のメカニカルトラブルが発生しがちだという。高額なディーゼルの需要が激減しているマーケットの現状をみるに、復活や代替ユニットの登場は見込めない。