【詳細データテスト】BMW X7 小型車並みの制動距離 リムジン並みの静粛性 ハンドリングと乗り心地のバランスも上々
公開 : 2020.09.19 11:50 更新 : 2020.09.22 05:54
走り ★★★★★★★★★☆
このご時世、530psもの4.4LツインターボV8を2.5t級の3列シートSUVに積むというコンセプトは、反社会的といってもいいだろう。このX7のトップグレードを前にして、夢中になるなというのは無理な話だ。
このエンジンは、驚くほどさまざまな顔を持つ。怒涛のパフォーマンスを見せつけたかと思うと、一転して申し分のない滑らかな洗練ぶりを味わせもするのだ。
スポーツプラスモードでローンチコントロールを作動させると、X7 M50iは四輪の底知れぬトラクションを活用し、リア寄りに荷重移動しつつ、とてつもない加速でスタートを決める。
ゼロスタートでの所要時間は、97km/hに4.8秒、161km/hに11.3秒。テストコースの1マイル、すなわち1.6kmほどのストレートが尽きる頃には、225km/hに達していた。それでも、自衛本能がこのクルマにふさわしい巨大なブレーキを効かせろと訴える地点に至っても、加速の勢いは衰える気配がない。強烈だ。
0−97km/hを3.9秒でこなすポルシェ・カイエンターボや4.4秒のレンジローバー・スポーツSVRに比べれば200kgほども重いだけに、そうしたライバルたちと肩を並べるというわけにはいかない。だが、公道上でその不足に気づくことはまずないだろう。
もしかしたら、パワーリフティングのように腰を沈めてから、朗々たるV8の猛威が高まり、前方へと爆発的に飛び出す走りは、ライバルたちより楽しませてくれるかもしれない。
実際、じつに広い回転域で発揮される豊かなトルクは、4速での48−113km/hを5.5秒でこなす。単なる速さだけでなく、フレキシブルさも印象深い。8速ATの、機敏で巧みな変速もグッドだ。
ただし、ちょっとばかり不満もある。あくまでも小さなものではあるが。
まずは燃費だ。テスト時のアベレージは6.7km/L。衝撃的な数字だが、驚くほどではない。
次が予想よりやや頻繁にシフトダウンする傾向をみせることがある点。走りを台無しにするようなものではないが、同乗者に不快な思いをさせないためには、右足の操作をやや繊細に行わなければならない。
緊急停止を試みた際のブレーキ性能には目を見張る。加速時と同じく、ハードブレーキング時のスタビリティは特筆すべきもので、113km/hからの完全停止に要する距離は45.2m。これは小さくて軽いフォルクスワーゲン・ポロのそれより短い。
対して、一般的な走行状況では、ブレーキペダルのプログレッシブさとフィールは、どちらも入念に調整され、スムースさと制御の効いた制動を実現している。