【ターボS、タイカンと比較】ポルシェ911カレラ(2) 濃密なスポーツカー 長期テスト
公開 : 2021.01.09 11:45 更新 : 2021.07.12 18:56
992型へと生まれ変わったポルシェ911。初代に通じる純粋さを残し、50年もの歴史を備える、最も有名なスポーツカーの1台です。最新のポルシェは、最良なのか。素の911カレラを通じて、その魅力を探ります。
積算1万1844km スポーツカー界のゴルフGTI
ポルシェ911を運転して最初に驚くことの1つに、使い勝手の良さがある。誤解を招くかもしれないが、スポーツカー界のフォルクスワーゲン・ゴルフGTIといえるかもしれない。長距離を安楽に移動できる、オン・オフのスイッチが付いているようだ。
これまで1600kmを走行しているが、ポルシェ911には適さないな、と思う場面は一度もなかった。ロードノイズは小さくないものの、ステレオの音量を上げれば気にならなくなる。
積算1万1941km 血のつながりを感じるタイカン
まもなく発表となるが、2020年の英国ベスト・ドライバーズカー選手権(BBDC)では、ポルシェ911ターボSが上位にランクインしている。水で覆われた難関サーキットを、四輪駆動のポルシェも駆け回った。
そのドライバーズカー選手権の審査会場へ、長期テストの911カレラで向かった。成長した古い職場に久しぶりにやって来た、そんな気持ちに少しなった。周りはすっかり変化している、そんな感じだ。
多くが500psを超えている中で、カレラは後輪駆動で控えめな385ps。今年のポルシェ911は四輪駆動で650psですよ、と。でも実際に運転してみて、安心もした。
ドライバーズカー選手権には、新しいポルシェ・タイカン・ターボSもノミネートしていた。4ドアの電気自動車だ。筆者にとっては初めてのタイカンへの試乗で、多くの点で911とは異なっていたが、血のつながりも感じさせてくれた。
シンプルな方がドライビング体験は濃密
タイカンの扱いやすさや安定性の高さ、シンプルな運転する喜びでは、911カレラと明らかに共通している。同時に、ターボSとの違いを体験することもできた。サーキットを走る前でも。
一般道では、911ターボSは正直パワフルすぎる。ポテンシャルの50%も出せば、法外な走りに到達してしまう。カレラの方が、ずっと自由に振り回しやすい。ターボSは、少々やりすぎのように感じてしまった。
素のカレラの加速力でも、運転免許証を奪われない範囲で、充分な爽快感を引き出せる。8速ツインクラッチ・オートマティック(PDK)のキックダウンも好感触。アクセルペダルの操作に対し、ATと同様に丁度いいタイミングでシフトダウンする。
シャシーはドライバーとの一体感を生み、深い対話が許される。運転の本気度が50%でも100%でも、ロードカーとしては、シンプルな911の方がより濃密なドライビング体験が得られると思う。
一方、サーキットでは逆のようだ。911ターボSは四輪駆動のトラクションで、見事なスタビリティを備えている。650psの猛烈なパワーを秘めていても、安全に素早く周回させられる自信があった。
ラップタイムでは、ターボSに並べるドライバーズカー選手権のノミネート車両はなかっただろう。しかしラップタイムが遅くても、より運転にのめり込ませてくれるクルマは存在していた。ターボSが、BBDCのベストに選ばれなかった理由でもある。