DS9 詳細データテスト じつにリラックスした乗り味 優れた質感 パフォーマンスと驚きは足りない

公開 : 2022.02.12 20:25  更新 : 2022.04.23 12:07

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

DSのバッジを与えられたビッグサルーンとなれば、大きな期待をかけられるのはデザイン面だ。1955年から続くDSの歴史を受け継ぐに値する存在となるには、100年に一台の大胆さと、世界をリードするエレガンスや細部にまで至る洗練性だ。

たしかに、初代DSを生み出した自由な気風漂う戦後のほかに、そこまでオリジナリティのあるクルマが誕生する時代があるのかどうか、そこは議論の余地がある。では、この9は初代DSの後継者たりえるのか。非常に高い基準に照らすならば、そうとはいえないだろう。しかしわれわれとしては、その点はある程度大目に見たいところだ。

新車当時の初代DSほど斬新でないのは、時代の違いを考慮すれば仕方のないところ。パワートレインは1.6Lガソリンターボと、それをベースとした2タイプのPHEVが設定されている。
新車当時の初代DSほど斬新でないのは、時代の違いを考慮すれば仕方のないところ。パワートレインは1.6Lガソリンターボと、それをベースとした2タイプのPHEVが設定されている。    MAX EDLESTON

きわめて一般的なセダンのシルエットに、すでにステランティスのさまざまなモデルに採用されているパワートレインやテクノロジーを組み合わせているのだ。高名な始祖に比べれば、水準が下がるのはやむを得ない。その反面、中国市場が好む欧風高級サルーンを造ろうとしたという前提に立てば、9が目指すものも、そのルックスも、かなり普通になってしまったのがなぜか、理解できるはずだ。

それを踏まえれば、これが単にクロームを満載して着飾ったプジョー508ではないといえる。DSはステランティスのEMP2プラットフォームを延長し、ホイールベースは508よりほぼ80mm長くなった。全長は、BMW5シリーズにあと50mmといったところに達している。

後席スペースは、ラウンジのようだと宣伝されている。遮音性の高いラミネートガラスが用いられるだけでなく、DSがハードボンデッドと呼ぶシャシーで室内騒音を最小限に抑えるために必要な剛性アップを果たしている。

パワートレインは3種類用意される。エントリーモデルは224psの1.6Lガソリンターボで、このほかにCO2排出量が50g/kmを切るガソリンPHEVが2機種設定されている。電動化モデルのE-テンスは、いずれもICE単体モデルと同じ1.6Lピュアテックがベースで、後席下に配置される11.9kWhの駆動用バッテリーも共通だ。

今回テストしたE-テンス225は価格が低いほうのバリエーションで、駆動方式はFF。システム出力は227psで、エンジンと8速ATとの間に108psの永久磁石同期モーターをサンドイッチしている。よりパワフルなE-テンス4×4 360は、リアに115psのモーターを追加した4WDで、システム全体では364ps/53.1kg−mを発生する。

サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクで、コイルスプリングと一般的なスタビライザーでウェイトを支える。

また上位グレードには、アクティブスキャンサスペンションが装着される。通常のアダプティブダンピング技術に、前面カメラとパワフルな画像解析装置を組み合わせたこのシステムは、予想される入力に合わせてストラットをアジャストできるアクティブサスペンションとなっている。

テスト車は下位寄りのグレードだったが、このアクティブスキャンサスペンションが装着されていた。オプション価格は1000ポンド(約15.5万円)だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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