DS9 詳細データテスト じつにリラックスした乗り味 優れた質感 パフォーマンスと驚きは足りない

公開 : 2022.02.12 20:25  更新 : 2022.04.23 12:07

走り ★★★★★★★★☆☆

急速に発展しているPHEVセダンのカテゴリーには、出力やEV航続距離、公称燃費に大きな開きのあるさまざまなモデルが存在する。その中で今回の9は、突出したスペックを誇るものではない。

われわれが選んだこのカテゴリーのトップ5を見比べると、今回の9とそれほど変わらない金額で、2倍近いパワーと50%以上長いEV航続距離を持つ4WD車が手に入ることがわかる。しかしながら、このクルマのエンジンは、ラグジュアリーさに見合っている。ゆったり走りたいと思っているうちは、とくに心地いい。

PHEVにもいろいろあるが、このクルマはパフォーマンスよりも高級感や快適性を重視したキャラクターで、その方面の要求は十分に満たしている。
PHEVにもいろいろあるが、このクルマはパフォーマンスよりも高級感や快適性を重視したキャラクターで、その方面の要求は十分に満たしている。    MAX EDLESTON

現実的な場面で見せるパフォーマンスそのものは、主なデータが示すとおり普通だ。でも、はっきりいってそれはたいしたことではない。これは、ラグジュアリーさ優先のクルマだからだ。1月の雨が降る中でのテストでは、発進加速で電子制御トラクションコントロールになんら問題は起きなかった。

0−97km/h加速タイムは8.6秒で、ここ10年間ほどの売れ筋だった4気筒ディーゼルを積む上級セダンとたいして変わらない。

DSは明らかに、ドライブラインの静粛性や、エンジンのスタート&ストップ、変速や全体的な作動のスムースさを重視している。そしてその点では、ほとんどのケースでかなり洗練されている。

4気筒エンジンは常に静かに回るが、高回転も苦にしない。また発進は、電動モードであろうとなかろうと、洗練された雰囲気のクルマだと思わせてくれるくらいスムースだ。風雨激しい中で計測した65dBAという室内騒音は、もっと好条件下での同じ速度でフォルクスワーゲンアルテオンeハイブリッドが64dBAだったことを考えると、上々の結果だと言える。

ハイブリッドパワートレインに多くを要求するほど、走りのなめらかさは目減りする。スロットル負荷が高まると、8速ATの変速にはわずかな遅れが出て、少々ガタつき、パワーデリバリーの中断が感じられるようになるのだ。

このトランスミッションのマニュアルモードはギアを固定できないので、パドルシフトで高いギアを選んでいても、スロットル開度が70%ほどを超えると、しばしば自動的にシフトダウンしてしまう。最大限まで自分でコントロールしたいと思っているなら、フラストレーションが溜まるところだ。

とはいえ、逆にこのギアボックスは、器用にシフトし、電動モードでもうまいあしらいをみせる。動力面はたいていの場合リニアで、ギアチェンジが感じられることはなく、80km/h程度までの交通の流れに乗るのには十分以上のパワーがいつでも引き出せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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