DS9 詳細データテスト じつにリラックスした乗り味 優れた質感 パフォーマンスと驚きは足りない
公開 : 2022.02.12 20:25 更新 : 2022.04.23 12:07
操舵/安定性 ★★★★★★★☆☆☆
このクルマに特有のキャラクターを、見誤ることはむしろ難しい。中型セダンとしては、快適なクルージングを最優先し、スポーティさを二の次にするのは、いまどき珍しい。
かつて、フランスのクラシックな大型サルーンは、押し並べてそういう特性を備えていた。精神的なルーツに当たるクルマたちの中でも最高の部類は、少なくとも多少は華のあるハンドリングとドライバーを楽しませる走りに、なめらかな足取りを生むしなやかさをあわせ持ち、そのバランスに優れていた。
この新顔もまた、その流儀に沿った運動性をみせる。しかし今回のDSは、かなりのグリップレベルと、このクルマに期待されるよりもバラつきのないボディコントロールをこそ賞賛されるべきだ。
兄弟分といえるプジョー508と比べて、9はそのサイズを感じる。ステアリングホイールは大きく、ロックトウロックは3回転。ホイールベースが長いので、舵を切った際のシャシーのレスポンスもゆるい。
しかし同時に、シトロエンらしくスプリングの動き出しに自由な部分があり、路面のバンプやキャンバー、盛り上がりなどを自分の強みに変えてしまうような対応ぶりをみせる。コーナーや、ダンパーに負荷がかかっているような状況でも流れるように駆け抜けるのだ。それこそじつに巧みに、そして心動かされるように。
しかもそれは、高速スタビリティや垂直方向のボディコントロールを犠牲にすることがない。モダナイズされ、プレミアムブランド化したシトロエンC6のように、やわらかすぎてふわふわ動くものではないのだ。
コーナリング時のロールや上下動はよく抑えられている。良好な静粛性と、控えめながら確かな沈着ぶりをあわせ持つが、速度上昇や路面悪化に伴って先に低下するのは前者のほうだ。軽く無感覚なステアリングや、アンダーステア寄りで安定志向の限界ハンドリングゆえに、あまり飛ばす気にはならないが、速度を上げてもそこそこの走りをみせてくれる。