フォード・マスタング・マッハE 詳細データテスト 加速も操縦性も注文あり バッテリーに改善の余地

公開 : 2022.05.07 20:25  更新 : 2022.06.21 14:20

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

ハンドリングの芸当のひとつふたつを隠し持っていないわけではないが、サイズや重量の影響を避け切れてはいない。

マッハE GTは決して、根っからのバランスや強力なグリップを備えた、心から夢中にさせてくれるドライバーズカーではない。その価格やポジションを正当化するのは難しいし、同じような欠点を持たないクルマと比較されがちなのはやむを得ないが、それに堪えうるものでもない。

2点間移動では、ハイパフォーマンスEVらしい速さをみせるが、フォードのドライバーズカーらしい魅力的な運動性はない。フィールの乏しいステアリングとブレーキが問題だ。
2点間移動では、ハイパフォーマンスEVらしい速さをみせるが、フォードのドライバーズカーらしい魅力的な運動性はない。フィールの乏しいステアリングとブレーキが問題だ。    MAX EDLESTON

最新の速いフォードであれば、現状の操縦系よりもっと魅惑的な感触と、磨き抜かれた精確さがあって然るべきだ。ボディコントロールの緊密さや、コーナリングの安定感あるバランスにも同じことがいえる。

そうした点でこのGTは、真にスポーティなアイデンティティを確立するには道半ばに過ぎない。さらに、ステアリングやブレーキペダルにはおもしろみや鮮明さがないので、クルマとの対話が平凡すぎてうれしくないのだ。

とはいえ、操舵はじつにダイレクトで、飛ばしてもかなり安定している。また、スポーティなフォードの多くがそうであるように、アペックスを捉えたコーナリングができる。フォードのトルクベクタリングのソフトウェアは、アンテイムドモードでは驚くほど強調された制御を行う。アペックスに向かって加速すると、リア内輪にブレーキをかけ、駆動力を外輪側へ送る。

そのプロセス自体は、旋回の初期フェイズで、コーナリングの挙動をとくにスロットルで調整しやすくするものである。電子制御のスタビリティコントロールをオフにしていればなおさらだ。少なくとも、その動きには先代フォーカスRSを思わせるところがある。

ところが、あまりにも重く、しかもフォーカスRSほどのメカニカルグリップはないので、マッハE GTは結局、RSモデルはもちろん、出来のいいほうのSTモデルのような方向転換や加速ができるわけではない。コーナーの進入で狙ったラインを捉えてしまうと、そのあとにドライバーの関心を引きつけ続けるようなものはほぼ与えてくれないのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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