【詳細データテスト】ポルシェ・カイエン 圧倒的な速さ 車重に負けないグリップ 快適性と装備は不満

公開 : 2022.07.30 20:25  更新 : 2022.08.22 15:06

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

3代目となるカイエンは、アウディQ7ベントレーベンテイガランボルギーニウルスといったフォルクスワーゲングループの兄弟車に先駆けて現行世代へ移行した。2017年のことだ。

それらのモデルと同じく、プラットフォームはMLBエヴォを使用するが、ホイールベースはほかより短い。ベンテイガやQ7/Q8より100mm、ウルスに比べればそれ以上ショートだ。もしも本質的に俊敏な大型SUVを探しているのなら、まずそこは好材料となる。

ゴールドの22インチホイールの内側には、巨大なカーボンセラミックブレーキが収まる。ターボのオプションにも22インチホイールは設定されるが、GTのそれはリム幅が半インチ広く、フロントアクスルが改良されていることを示唆する。
ゴールドの22インチホイールの内側には、巨大なカーボンセラミックブレーキが収まる。ターボのオプションにも22インチホイールは設定されるが、GTのそれはリム幅が半インチ広く、フロントアクスルが改良されていることを示唆する。    MAX EDLESTON

この手のクルマは無駄が多いように思われるが、ポルシェは間違いなく軽量化や低重心化を視野に入れて、ターボGTの設計や仕様決めを行なっている。それこそ、わずかながら軽く、屋根が低いカイエン・クーペのみをベースとしている理由だ。

さらに、カーボンルーフが標準仕様で、車体の一番高い部分から重量を削減している。カイエン・クーペに装備されることが多いグラスルーフと比較した場合、その差は22kgにもなる。また、チタンエキゾーストは、ターボ用より18kgも軽い。カーボンセラミックブレーキも標準装備される。

テスト車の実測重量は2251kg。2018年にテストしたターボを50kg、1年前に計測したウルスを34kg、それぞれ下回る。

ターボGTの車高は、カイエン・ターボより最大17mm低い。走行モードによって変化する実質的なスプリングレートは、3気室式エアサスペンションの車高調整機能により、ほかのグレードより10~15%高めている。

多岐にわたるマテリアルの変更は、アダプティブダンパーのPASMや、ターボよりロック率を強めたトルクベクタリング機能付きリアディファレンシャルのPTV、四輪操舵システムといった各デバイスにも及ぶ。アクティブ制御のアンチロールシステムも、全面的にチューニングが見直された。

フロントのサスペンションジオメトリーは見直され、ほかのカイエンよりワイドな22インチホイールを許容する。ネガティブキャンバーは0.5°強められ、横グリップの限界値を高めた。前後とも、ヘルパースプリングは長く、マウントは硬くされている。タイヤはハイパフォーマンス銘柄のピレリPゼロ・コルサがスタンダードだ。

ボンネットを開けると、大幅に改修された4.0LV8が姿を表す。ベースとなるのは、ポルシェ主導で、フォルクスワーゲングループが数年前に新開発したユニットだ。最高出力は641ps、最大トルクは86.7kg-mを発生。ウルスよりパワーはわずかに劣るが、トルクは同一で、これはグループ内の戦略が絡んで決められた数値なのだろう。

カイエン・ターボとは、数多くの構成部品が違っている。クランクシャフトやピストン、コンロッド、チェーン駆動系、ターボとインタークーラー、そしてエンジンマウントが専用品だ。さらに、ラジエーターが3基追加され、圧縮比はわずかに下げられ、高められたブースト圧に対応させている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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