【詳細データテスト】ポルシェ・カイエン 圧倒的な速さ 車重に負けないグリップ 快適性と装備は不満

公開 : 2022.07.30 20:25  更新 : 2022.08.22 15:06

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

乗り込むときにはドレスアップをしたくなるようなクルマというのもある。となると今回は、さしずめレスラーのマスクとケープをまとって歩み寄りたい、四角いリングのようなクルマということになるだろうか。

というのもカイエン・ターボGTは、ドライバーに腕力と本気の取り組みを要求するクルマだからだ。何度も言っているが、これは大きくて重く、しかも速いクルマで、乗っていると常に物理的な力に晒される可能性がある。それも、小さくない力に。

スタビリティコントロールの働きは控えめで、2.3tの巨体をスポーツカーのように振り回したければオフにすることもできる。そして、ある程度までは、そういう走りが本当にできる。
スタビリティコントロールの働きは控えめで、2.3tの巨体をスポーツカーのように振り回したければオフにすることもできる。そして、ある程度までは、そういう走りが本当にできる。    MAX EDLESTON

適切な環境でグリップさせて走ると、巨体を持つほかのマッスルカーにはできそうもないことができるのが身をもって分かるはずだ。しかし、驚くことではないかもしれないが、緻密さやしなやかさ、デリケートさや俊敏さはそこにない。

むしろ、物理法則に左右されたがって、全開で走るのは非常に難しい。また、グリップ限界でコーナーを抜けるとほぼ同じようなラインと挙動になり、ある意味やんちゃな魅力をみせつけられるが、それによってますますこのクルマにのめり込まされる。もちろん、それを確かめるのは、安全に試せる場所に限られるが。

標準設定のノーマルモードでは、ステアリングの重さはほどほどで、ペースは一定で、直感的かつ慎重なところが感じられる。長距離運転がしやすくなり、安心感や精密さも増すが、リラックスしてドライブできるようになる。ボディコントロールは整っていて、しかし従順さを犠牲にはしていない。

ところが、よりスポーティなセッティングを選ぶと、ステアリングリムの手応えとフィードバックは、ラグジュアリー志向のSUVのほとんどがみせるものよりも倍か、それ以上に増す。ボディコントロールも、より緊密で妥協がないものとなる。

ただし、アルファロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオのような素早い動きは避けている。このポルシェは歩調の整ったターンインをしたがり、よりタイトなカーブではコーナリングラインを安定させるのに多少の時間がかかり、フロントの接地面で発生した横荷重がリアへと伝わって、加速しながらアペックスを通過する準備が整う。

けれども、Pゼロ・コルサを履いたこのクルマは、間違いなくボディコントロールのパワーを限界まで試せるほどグリップが強力だ。いったん自重を落ち着かせたら、きわめて速いスピードが乗るタイトなラインをガッチリ捉え続け、驚くほど安定して超高速コーナーを駆け抜け、パワーオーバーステアに持ち込むことが求められたら、駆動力を適切な場所に伝えることができる。

だが、そのサイズと重量を考えたら、どこでもそれを試せるわけではない。広くてクリアなサーキットでもなければ、全開にするのは難しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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