ベントレー・フライングスパー 詳細データテスト 快適さと走りの好バランス 電池容量と静粛性に難が

公開 : 2022.08.27 20:25  更新 : 2022.09.06 05:17

結論 ★★★★★★★★★☆

ベンテイガ・ハイブリッドが登場した2019年当時、ベントレー初のPHEVとしては誰からも賞賛されるものではなかったかもしれない。しかし、第2弾はその趣旨がはるかに明確だ。

このクルマには、ベントレーに期待される堂々としたパフォーマンスが備わっている。また、すばらしく快適で、洗練され、贅沢なほどにラグジュアリーだ。ドライバーを魅了する要素も豊かにある。

結論:PHEVサルーンとしては力強く、説得力のあるクルマだが、ベントレーのバッジに期待するレベルを満足させるまでではない。
結論:PHEVサルーンとしては力強く、説得力のあるクルマだが、ベントレーのバッジに期待するレベルを満足させるまでではない。    WILL WILLIAMS

多くの点から見て、フライングスパーを買うなら、これこそ申し分のない、もっとも説得力のある選択肢だ。2021年にテストしたV12搭載のロールス・ロイス・ゴーストよりも速く、しかもそこそこの距離を燃料を一滴たりとも使うことなく、きわめて穏やかに走ることもできる。

高級車としては、2年前にテストしたW12よりも守備範囲が広く、状況に合わせて走りのキャラクターを変容させることができる。そして、おそらくはより好ましいクルマでもある。

そして、多少のガソリンを燃やせば、より無理のない移動ができ、結果としてより気分よく乗ることができるようになる。2022年の時流を考えれば、その魅力はいっそう増す。

それでも満点を取れなかったのは、静粛性とパッケージングが完璧とはいえず、しかもEV走行可能な距離が競合車よりだいぶ短いからだ。とはいうものの、重量とスペース、機能性の妥協点としてはみごとなものがあり、その成果はじつに意義深い。

担当テスターのアドバイス

マット・ソーンダース

以前、夜明けのフライトに間に合うように、ハネムーンに向かうカップルをフライングスパーW12で送り届けたことがある。寂れた道をひた走ったのだが、あのクルマは完璧な仕事をしてくれた。ハイブリッドはさらにいいかもしれないが、ふたり分の旅支度をトランクに積み込めるかは自信がない。

イリヤ・バプラート

大型のベントレーに、PHEVが本質的に合うものなのか怪しいものだ、と思う。近所への買い物などにチョイ乗りするような類のクルマではないのだから。長距離走行に特化しているクルマであって、PHEVが得意とするような短い距離を乗るのはもったいなく感じてしまう。

オプション追加のアドバイス

マリナー仕様には、後付けしたくなるようなアイテムがほとんど標準装備されているが、22インチホイールは避けたいところだ。いっそ、ハイブリッドの通常モデルに、ツーリング/ダイヤモンドナーリング/ムードライティングの各パッケージとネイムのオーディオを追加したい。

改善してほしいポイント

・走行時の洗練性と静粛性があと一歩足りない。シャシーの改良が求められる。
・駆動用バッテリーのエネルギー密度を、できるだけ早く高めてほしい。
・音声認識を、自然な発話に対応できるよう改良してもらいたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ウィル・ウイリアムズ

    Will Williams

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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