わずか500mに通行料4万円! 「波崎シーサイド道路」に行ってみたら…… 地権者逮捕の真相とトラブルの歴史
公開 : 2022.12.18 05:45 更新 : 2022.12.18 14:45
わずか500mの通行に4万円。地権者が逮捕され話題となった「波崎シーサイド道路」。事件の真相とトラブルの歴史を取材しました。
高額通行料 払わないと轢かれる?
茨城県神栖市の太平洋沿いを走る「波崎シーサイド道路」は1970年、鹿島臨海工業地帯の開発に向けて茨城県が施工した。
茨城県警神栖警察署によると、無料で通れて信号がなくスピードが出せることから「弾丸道路」と呼ばれていた時代もあったとのこと。銚子方面から鹿島工業団地にクルマ通勤する人にとっても理想的な通勤ルートだった。
11月8日午後4時50分頃。その波崎シーサイド道路でとんでもない事件が起きた。
実はこの道路、一部が私有地となっており、通行するには途方もなく高額な「通行料」を支払わないといけない。
その額はなんと「4万円」!
通行するのに500円支払えばよかった時代も長くあったが、諸事情によりその後、1万円→3万円→4万円と値上がりをして現在に至る。
近所ではトラブル発生の場所として有名な場所であり、これまでもたびたび、通報によってパトカーが急行してきた場所でもある。
このたびの事件で被害を受けたのは43歳の会社役員だ。
おびただしい数の進入禁止看板を無視して私有地に入ったところ地権者に通行料4万円を請求された。
しかし、通行料を支払う意思を見せず、地権者と口論になってしまった。
そして地権者である70歳男性はその会社役員に向かってクルマを急発進。丸腰の会社役員はぶつけられて転倒し、全治2か月の重傷を負った。
神栖警察署の担当者は以下のように明かす。
「会社役員の男性が何を目的に私有地に進入したかは不明ですが、請求された4万円を払わないことに地権者が怒り、立ちはだかる会社役員めがけてクルマを急発進させました」
「会社役員はひとりだったこともあり、警察には被害者自身が通報しています。結果的に骨折していたことがわかり全治2か月という診断を受けましたが、その場で意識がなくなるようなケガではなかったのでしょう」
地権者逮捕 なぜ逮捕まで1か月?
事件発生から約1か月が経過した12月5日。神栖警察署は地権者の男性を「傷害罪」で逮捕した。
自動車を急発進させて丸腰の人間めがけて突進していくなど、殺意さえ感じさせる異常な行動であるが、なぜ逮捕まで1か月近くかかったのか。前出の神栖警察署に事情を尋ねてみた。
――なぜ、逮捕まで1か月もかかったのでしょうか?
「現在、まだ捜査中なので詳しいことはお伝え出来ませんが、地権者の男性は容疑を否認(黙秘)していました」
「被害者が波崎シーサイド道路の私有地に入った理由や動機は明らかになっていませんが、被害者に向かってクルマをぶつけてけがを負わせたにもかかわらず、地権者は故意にぶつけたことを認めませんでした」
「あくまでも『過失』によって被害者を転倒させてしまったと。クルマを運転して『過失』でケガを負わせたとなると、『過失運転致傷』など、交通事故と同じ状態になります」
「しかし、警察としては状況から見て意図的にぶつけたのは明らかだと判断し逮捕に至りました。そのような経緯があったために少し時間がかかったのです」
――波崎シーサイド道路のこの場所はこのようなトラブルがこれまでもありましたか?
「詳しくはお答えできないのですが、無断進入したクルマが地権者に見つかり、高額な通行料を請求されて払う、払わない、でいざこざになることはあったと思います」
「4万円の通行料を請求されて困っているとして通報されるようなケースはありました。ほとんどは、通行料の支払いを請求された側からの通報です」
「トラブルが増え始めたのは2006年頃からです。わたしの記憶では2003(平成15)~2004(平成16年)頃は通れていたと思います。波崎トライアスロン大会(1987年に第1回開催。2010年以降休催)のコースとして使われていたこともあります」