メルセデス・ベンツEQE 詳細データテスト 徹底した快適志向 良好な操縦性 らしさのない質感

公開 : 2023.01.14 20:25  更新 : 2023.02.13 07:56

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

SFチックで革新的なメルセデスの4ドアのデザインに対するリアクションは、賛否両論入り混じっている。大胆で個性的なルックスだと、歓迎する向きはあるだろう。いっぽうで、長年にわたり磨き上げてきたデザインアイデンティティに、ここまで大幅な改変をする必要があったのかといぶかしむ声もまた少なくない。

メルセデスは、EQEのルックスをパーパスデザインと呼ぶ。アーチを描くボディサイドのワンボウフォルムや、キャビンフォワードなプロポーション、なめらかな表面形状などが、すべてひとつの目的に向かっているからだ。すなわち、空力効率向上と、それに伴う風切り音の低減である。

充電ポートは右リアにあり、急速充電は最大170kWに対応。ただし、テスト時の計測値は平均124kWにとどまった。
充電ポートは右リアにあり、急速充電は最大170kWに対応。ただし、テスト時の計測値は平均124kWにとどまった。    MAX EDLESTON

あまりにも機能面ばかりを追求しすぎているのではないか。意見は人それぞれだと思うが、少なくともオートカーのテスター陣においては、そう考えるのが多数派だ。EQEは、まるで風洞の中でデザインされたようなルックスだし、偶然そうなったわけでもない。メルセデスは2013年から、自前の空力音響風洞を、デザイン開発に使用している。

0.22というCd値は、EQSの0.20にはわずかに及ばない。ホイールベースが90mm短く、オーバーハングも短縮され、車高調整式エアサスペンションが標準装備されないことが、この差の理由だろう。

EQEに用いられるEV専用プラットフォームのEVA2はアルミ主体のシャシーと、リサイクルスティールのボディを組み合わせている。上位のEQSと同様、パワートレインは永久磁石同期モーターをリアに1基搭載するのが標準的な仕様で、エントリーモデルのEQE 300では244ps、EQE 350では292psを発生。トップグレードのAMG EQE 53は、フロントにも駆動用モーターが追加される。

駆動用リチウムイオンバッテリーはキャビンの床下に配置され、実用容量は89kWh。現時点では、ポルシェタイカンBMW i4を上回っているが、テスラモデルSの95kWhには届かない。EQE 53には、わずかに容量の大きい90.6kWh仕様が採用される。

今回テストするEQE 350+は、生産開始時に短期間のみ設定された仕様で、EQE 53と同じ大容量版バッテリーを積む1モーターモデル。メルセデスはこれを、2023年内に再び設定すると予告している。

サスペンションは四輪マルチリンクで、標準仕様はコイルスプリングを装着。AMGラインとプレミアム・プラス以上の上位仕様には、アダプティブダンパーや車高可変式エアスプリング、四輪操舵が備わる。テスト車は、これらのデバイスを装備している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事