2.2Lにボアアップで250馬力 ジェンセン・ヒーレー 一緒に過ごして半世紀 後編
公開 : 2023.04.15 07:06 更新 : 2024.08.16 16:55
現役時代はダットサン240Zと伍したジェンセン・ヒーレー。1人のオーナーが半世紀近く大切にする1台を、英編集部がご紹介します。
もくじ
ーキャブレターから燃料インジェクションへ
ー数枚の補助メーターが並ぶダッシュボード
ー瞬間的に目覚めるロータス907ユニット
ーロマンスを感じさせない雰囲気が最大の弱点
ージェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)のスペック
キャブレターから燃料インジェクションへ
エンジンがリビルドされたジェンセン・ヒーレー。「2.2Lになりトルクが太くなりました。0.78:1のギア比の5速に入れても、充分に加速できますよ」。ロータス907ユニットの第一人者である、マイク・テイラー氏が説明する。
初期のエンジンが抱えていた、シリンダー間で圧縮が抜ける問題も解決できた。バランス取りした軽量ピストンとコンロッドも組まれるが、オイルサンプはオリジナルのままだという。
同時にトランスミッションも交換され、大きいトルクを受け止めるべく、クロスメンバーが追加してある。クラッチケーブルは、ロータスの部品を加工して利用している。
プロペラシャフトとスピードメーター用ケーブルも、マイクが用意したもの。クラッチペダルの位置が変更され、インプットシャフトにも手が加えられた。
実はこのトランスミッションの載せ替え用に、彼は2800ポンド(約45万円)でコンバージョン・キットを提供している。既に10台分が売れたという。
乗りやすさを求めたオーナーのロバート・ヒックマン氏の要望へ応えるように、キャブレターから燃料インジェクションへアップグレードもされた。これも、3500ポンド(約56万円)でキット化されている。
気筒毎に点火コイルが組まれ、ディストリビューターは不要に。オルタネーターは大容量化され、スターターはギア駆動で効率を高めた。軽量なフライホイールへ交換され、鋭いコーナリングに備えてガソリンタンク内部も改良を受けている。
数枚の補助メーターが並ぶダッシュボード
ロバートは足回りへ手を加えるつもりはなく、180馬力程度で充分だと考えていたが、最終的に250馬力へ上昇。ステアリングラックとブレーキも、アップグレードされることになった。
今後、さらに年齢を重ねるロバートのために、電動パワーステアリングの追加も可能らしい。この状態へ仕上げるまでに、半年を費やしたそうだ。
アルミホイールはオリジナルをマイクが探し出し、細身のピレリが組み合わされた。13インチの185/70というサイズがラインナップされる、クラシックカー向けのCN36タイヤを履く。
新車時から、味気ないとか特徴が薄いと批判されてきたジェンセン・ヒーレーのスタイリングだが、確かにフロントマスクは個性的とはいえないだろう。ホイールアーチの隙間も大きい。それでも、斜め後方からの容姿には魅力を感じる。
大きなリアデッキの内側には、余裕のある荷室が広がる。ヒルマン・ハンターのものが流用されたテールライトの収まりは悪くない。
全体がブラックで仕立てられたインテリアも、造形的には目立った特徴がない。オースチン・ヒーレー3000の後継モデルとして、新しさが狙われているように感じる。空間は広く、操作系のレイアウトも考えられている。
ダッシュボードには、電圧や油圧の補助メーターが並ぶ。警告灯だけで済まされる時代が訪れていたなかで、スポーティに感じたドライバーは多かったはず。ただし、シートベルトの警告灯は付いている。