2.2Lにボアアップで250馬力 ジェンセン・ヒーレー 一緒に過ごして半世紀 後編
公開 : 2023.04.15 07:06 更新 : 2024.08.16 16:55
瞬間的に目覚めるロータス907ユニット
ボンネットを開くと、4基並んだスロットルボディが美しい。余裕のあるエンジンルーム内は整然としており、高さを抑えるため傾けて搭載された姿を眺められる。
燃料インジェクション化されたロータス907ユニットは、瞬間的に目覚めた。3枚のペダルには充分な間隔があり、滑らかで、特に慣れが必要な部分はない。
走り始めると、目前に広がる長いボンネットが上下に揺れる。視覚的に柔らかい乗り心地であることを強調するが、1970年代のオープン・スポーツとして考えれば快適だ。
ステアリングラックのレシオは低く、軽すぎず、バランスの取れた身のこなしと調和している。コーナーへ突っ込むと、発生している負荷をロールで教えてくれる。限界が迫ると徐々にアンダーステアへ転じる。
トルクは太く、エンジンのレスポンスは良好。アクセルペダルの加減で、穏やかにオーバーステアへ持ち込める。トヨタ製の5速マニュアルはスムーズ。ギア比はエンジンのトルク特性にピッタリで、流暢に加速できる。
同時期のアルファ・ロメオのツインカムほど、エンジンは心地良いサウンドを鳴らさない。しかし深呼吸するような吸気音が好ましく、チューニングで得た排気量当たりの馬力には唸らされる。
1.0t弱のジェンセン・ヒーレーは、ロケットのように加速はしない。だが、低回転域からのピックアップはたくましい。オリジナルより扱いやすく、確実にパワフルだ。
ロマンスを感じさせない雰囲気が最大の弱点
誕生から半世紀を経たジェンセン・ヒーレーだが、多くは今でも恵まれた境遇にはない。オースチン・ヒーレー3000とは異なり、ラリーで優勝したような栄光もない。
決して設計は悪くなかった。いくつかの弱点を許せそうな、ロマンスを感じさせる雰囲気を備えていなかったことが、最大の弱点だったのかもしれない。
ロータス・エランのように、ジェンセン・ヒーレーは多くの人の心を捉えることはできなかった。しかし、人生の半分以上を一緒に歩んできたロバートは例外だった。
オリジナルの見た目を巧みに残しながら、適度にモダナイズされた仕上がりは素晴らしい。1人の男へ47年間も大切にしたいと思わせる、確かな魅力がここにはある。
ジェンセン・ヒーレー(1972〜1975年/英国仕様)のスペック
英国価格:1810ポンド(新車時)/2万5000ポンド(約402万円)以下(現在)
販売台数:1万926台
全長:4115mm
全幅:1605mm
全高:1219mm
最高速度:197km/h
0-97km/h加速:7.5秒
燃費:8.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:965kg
パワートレイン:直列4気筒1973cc自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/6500rpm
最大トルク:17.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:4速・5速マニュアル