MG 4 EV 詳細データテスト 安価ながら高い完成度 後輪駆動の楽しさあり 快適性にも進歩あり

公開 : 2023.04.15 20:25  更新 : 2023.05.06 07:52

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

本格的なEVの時代になろうとしつつあるなか、各社は前輪駆動派と後輪駆動派に分かれようとしている。ルノーやステランティス、キアなどは、小型EVを前輪駆動化して、前後を結ぶケーブルをなくし、シングルモーターをフロントに積んで荷室の深さを稼いでいる。内燃エンジンのFFモデルとより多くのコンポーネンツをシェアするのも、狙いのひとつだ。

いっぽう、違う選択をしたのが、フォルクスワーゲンや今回のMG。そこには独自のパッケージングの利点と、ハンドリングの優れたクルマに仕立てることができるポテンシャルがある。

後輪駆動ゆえにハンドリングは楽しく、舵角が大きく取れるので小回りが効く。柔らかめの足回りは、悪路でもスムース。ADASは出来のいいものと悪いものが混在している。
後輪駆動ゆえにハンドリングは楽しく、舵角が大きく取れるので小回りが効く。柔らかめの足回りは、悪路でもスムース。ADASは出来のいいものと悪いものが混在している。    MAX EDLESTON

それらのアドバンテージは、多くのドライバーにとってはさほど明確に感じられるものではないかもしれない。しかし、それを求めるドライバーにとっては大きな意味がある。MG 4の場合、ステアリングはうれしくなるほど、モーターの瞬間的なトルクに損なわれずに済んでいる。コーナーで、引っ張られるのではなく押し出される感覚は、いつだって楽しいものだ。

左右の前輪の間にエンジンもモーターも不在なので、スペースいっぱいに舵角を取れるため、回転径は驚くほどタイトになる。ロックトゥロック2.8回転と聞いたらかなりスローなステアリングに思えるが、そうではない。それだけ大きくタイヤが切れるということだ。ただし、奇妙な見た目のステアリングホイール越しに、もう少しフィードバックが感じられたらうれしいのだが。

スポーティさのマイルドな後輪駆動EV、具体的に言えばクプラボーンと比べれば、MG 4はサスペンションが比較的ソフトで、より大きなボディの挙動を許容する。結果として、クプラよりややクルマとの距離が大きく、抑えは足りない感触となっている。

しかし、それに自分を合わせることはすぐにできて、英国のゴツゴツした道も意に介せずいなしてしまうことに気づく。

MGパイロットと銘打たれたドライバーアシスタンスシステムは、良いところも悪いところもまぜこぜといった感じ。エントリーグレードのSEでもACCと車線追従機能は標準装備だが、その出来はかなりプア。しかも、一般的なクルーズコントロールに切り替えることはできない。

ACCはビクビクとギクシャクした動きを見せ、車線追従はレーンの端ギリギリまで流れたかと思うと、ドライバーとコントロールを争うように作動する。反面、レーンキープアシストは、全体的に運転を邪魔せず、自動緊急ブレーキにもなんら問題はなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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