メルセデスAMG GT 詳細データテスト 純粋さを欠く動力系とハンドリング 気になる高周波ノイズ

公開 : 2023.07.01 20:25  更新 : 2023.07.04 00:56

結論 ★★★★★★★☆☆☆

エンジニアリング的に達成したものを考えれば、メルセデスAMG GT63S Eパフォーマンスはみごとな仕事ぶりだ。

これほどパワフルなプラグインハイブリッドパワートレインを産み出し、しかもサーキットで見せるスタミナも驚異的なのだから、その点ではアファルターバッハを称賛するほかはない。同じドイツ勢のライバルにも、ここまでやってのけたものはない。最近のF1での経験があればこそ、成し遂げられたのだろう。

結論:ロケットのようなGTが、驚くべきパワートレインを手に入れた。それでも、走らせ甲斐が希薄なのは相変わらずだ。
結論:ロケットのようなGTが、驚くべきパワートレインを手に入れた。それでも、走らせ甲斐が希薄なのは相変わらずだ。

おそらく、この手の技術を用いて開発されると、ハード面の感覚的な部分は見落とされがちになるのだろう。もしくは、ゼロエミッションのトランスポーターから獰猛なV8マシンまでを1台に共存させようとしたキャラクターの幅広さが、ホットロッド的なカリスマ性を失わせたのかもしれない。二兎を追う者は一兎をも得ず、ということか。

V8を搭載しているものの、このクルマははっきり言って、ドライバーを激しくその気にさせるものではない。843psのメルセデスAMGであれば、もっと強烈にソソるものになるはずなのだが。

このことからはっきりわかるのは、多面的な複雑さは、正真正銘のドライバーズカーが持つ、真に深い味わいと引き換えにするには弱いということだ。そのことは、完全電動化へ近づくにつれ、アファルターバッハにとっては本腰を入れて取り組むべき課題となってきている。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

カリスマ的なV8エンジンが騒々しくても、走っているときはもちろん、アイドリングや信号で止まっているときでさえ問題になるとは思わないだろう。ところが、無音で走っていると、GT63Sは大事なものを奪われたように感じられる。ちょっと無意味な感じさえする。そんなわけで、運転している間はほぼずっと、エンジンオンで走るスポーツモードを選んだ。

マット・ソーンダース

トラックペースアプリはレースエンジニアスタイルのブーストデプロイメントストラテジーを備える。アファルターバッハが開発したもので、世界中のサーキットでよく知られているものだ。これは周回中のどこでモーターのトルクを解放すればいいか、正確に教えてくれる。残念ながら、われわれがテストを実施するMIRAのドライハンドリングコースは、対象のサーキットではなかったのだが。

オプション追加のアドバイス

可動式スポイラーがお気に召さないなら、3000ポンド(約55万円)のエアロダイナミックボディキットを選ぶといい。また、2100ポンド(約38万円)のドライビングアシスタンスプラスパッケージは追加をお忘れなく。ユーザーが求めるだろう機能が揃う。

改善してほしいポイント

・よりハードなカップタイヤを、サーキット性能を求めるユーザーのために用意してほしい。
・電動アクスルの洗練性に問題あり。修正を求む。
・ステアリングにもっと手応えのあるフィードバックを。限界域でのボディコントロールも改善を願うところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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