無二のミケロッティ・コンバーチブル フェラーリ166/195S インター 2.3L V12へ置換 前編

公開 : 2023.08.06 07:05

クーペとして誕生し、ルーフを切除され、最新V12エンジンへ置換された166。唯一無二の1台を英国編集部がご紹介します。

ミケロッティによる唯一のコンバーチブル

2023年5月。戦前戦後のクラシックカーが、グレートブリテン島の古い飛行場へ集まった。ロンドン・ケンジントンに拠点を置くカーディーラー、グレガー・フィスケン社が開催したイベントは、さながら、英国紳士のおもちゃ箱といった様相になった。

フォードGT40にジャガーCタイプ、アルファ・ロメオ8C、タルボラーゴのグランプリカー。お宝ばかりで、どれから見ていいのかわからない。今どこにいるのか、忘れてしまいそうになる。

フェラーリ166/195 インター・コンバーチブル(1951年/欧州仕様)
フェラーリ166/195 インター・コンバーチブル(1951年/欧州仕様)

そんな興奮高まる会場から、英国編集部は極めて貴重な1台へ目を付けた。落ち着いたダークブルーに塗られたボディが包む、シャシー番号は0051S。見事な曲線美と格子状のフロントグリルは、クラシック・フェラーリのトレードマークといっていい。

フロントフェンダーには、Vのロゴがあしらわれている。若干調和していないコンバーチブル・ボディは、ジョヴァンニ・ミケロッティ氏が所属していたヴィニャーレ社による作品だと、ひっそり主張するように。

166 インターのオリジナルとなるクーペボディは、カロッツエリア・トゥーリング社がスタイリングを手掛けた。だが、こちらは小さなオープン2シーター。取材を申し出ると、ロンドンの西にあるロートン飛行場まで撮影用に手配していただいた。

初期のフェラーリのアイデンティティを構築

トリノのヴィニャーレ社とミラノのカロッツエリア・トゥーリング社は、初期のフェラーリのビジュアル・アイデンティティを構築する重要な役割を果たした。1950年代後半に、ピニンファリーナ社と正式に契約が結ばれるまで。

このフェラーリには肉厚なレザーシートが載り、ダッシュボードにはクロームリングのメーターが並ぶ。イタリアの公道レース、ミッレミリアでの勝利を念頭にデザインされたわけではないものの、フロントバンパーは備わらず、凛々しい佇まいにある。

フェラーリ166/195 インター・コンバーチブル(1951年/欧州仕様)
フェラーリ166/195 インター・コンバーチブル(1951年/欧州仕様)

V12エンジンから後方へ伸びる、エグゾースト・パイプの取り回しに苦労しているのがわかる。ホイールベースは、小柄なMG Tタイプより短い2250mm。ドラムブレーキを包むボラーニ社製のワイヤーホイールが、相対的に大きく見える。

ボディの下を覗くと、2本の楕円形パイプからなるチューブラーシャシー構造が見える。その間に、アルミ製のディファレンシャルケースがぶら下がる。

リア・サスペンションは、リーフスプリングにリジッドアクスル。フロント側は、当時のフィアットのような不等長ウィッシュボーンと、横向きに配置されたリーフスプリングという組み合わせ。

足まわりの洗練度は、決して高くない。繊細な操縦性より、耐久性が重視されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ティム・スコット

    Tim Scott

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

無二のミケロッティ・コンバーチブル フェラーリ166/195S インター 2.3L V12へ置換の前後関係

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