背後で放たれる750psの脅威 ランボルギーニ・ムルシエラゴ アヴェンタドール 歴代4モデルを比較する(3)

公開 : 2023.12.03 17:47

ドライバーの背後で開放される750psの脅威

アヴェンタドールの英国での価格は、オプション抜きで24万2000ポンドから。多くの利益が得られる設定だった。

販売は順調に伸び、キャンセル待ちのリストは増え続けた。早期の割り当てを切望する
ディーラーは、ガヤルドを2台納車することを条件に順番が繰り上げられたという。

ランボルギーニ・アヴェンタドール LP750-4 SV(2011〜2022年/英国仕様)
ランボルギーニ・アヴェンタドール LP750-4 SV(2011〜2022年/英国仕様)

需要に合わせて、生産体制も拡大。2013年以降は、年間1000台以上のアヴェンタドールの供給を可能としている。

生産は2022年に終え、フラッグシップの座はレヴエルトへ譲ったとはいえ、その存在感は揺るぎない。シャープなシザーズドアを開けば、ジェット戦闘機を彷彿とさせるインテリアが広がる。

圧倒的な速さであることを、今回のアヴェンタドール LP750-4 SVでは一層印象づける。アルカンターラとカーボンファイバーで内装は仕立てられ、深いバケットシートが標準。ウイングやディフューザーと同じくらい、容赦ない。

ミサイル発射ボタンのように、赤いカバーを持ち上げて、センターコンソール上のエンジンスターター・ボタンを押す。少し大げさにも思えるが、ドライバーの背後で開放されるV12エンジンの750psという脅威を知れば、必要な手順に思えてくる。

電動アシストが備わり、ステアリングホイールは軽く回せる。低速域では、ワイドなフロントタイヤが路面で揉まれる様子が伝わる。優しくアクセルペダルを傾けていると、シングルクラッチのセミATがぎこちなく次のギアを選ぶ。

ひと握りの人を魅了してやまない蒸留と熟成

通常のアヴェンタドールよりシリアスであることが、共鳴するロードノイズの大きさでわかる。タイヤが蹴飛ばした小石がシャシーへ当たる音も、パラパラと良く聞こえる。

右足へ力を込めると、間髪入れずに回転数が急上昇。同時に猛烈な加速が始まる。その直後、メーターパネルのモニターが点滅し、次のギアを選ぶよう警告される。

ランボルギーニ・アヴェンタドール LP750-4 SV(2011〜2022年/英国仕様)
ランボルギーニ・アヴェンタドール LP750-4 SV(2011〜2022年/英国仕様)

ステアリングホイール奥のパドルを引くと、お尻を叩くような衝撃とともにシフトアップ。周囲を置き去りにする勢いで、再び速度が上昇し出す。

ブレーキペダルやステアリングホイールへ伝わるフィードバックには、それ以前のモデルのような繊細さはない。SVに備わるマグネティック・ダンパーも、しなやかとはいいにくいだろう。

それでも、高速コーナーで貪欲にパワーを展開すれば、ランボルギーニらしい喜びが待っている。まさにモンスター級のスーパーカーだ。

ランボルギーニは、アヴェンタドールのアグレッシブ度を追求するべく、780psのSVJ LP770-4を2018年に投入した。2021年には、最終モデルとしてLP780-4 アルティマエをリリース。究極形で、純粋なV12エンジンの終止符を打った。

同社を創業したフェルッチオ・ランボルギーニ氏の哲学は、間口を広げる進化を重ねつつ、熱狂的なパフォーマンスで許されたひと握りの人を魅了してやまない。シザーズドアとウェッジシェイプを守り、類まれな蒸留と熟成が重ねられてきたといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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