【本当に大丈夫?】オペルの日本再上陸 浮かぶ4つの疑問 求められる正攻法の事業戦略
公開 : 2020.02.22 13:51 更新 : 2021.10.09 23:55
オペルが2021年に日本再上陸。正規輸入としては、15年ぶりです。そこで浮かぶ4つの疑問。オペルのブランド再構築の方法としては、「構築の難しさ」を逆手に取るような、「正攻法」の事業戦略が必須です。
オペル、日本に再上陸 なぜ2021年なのか?
ドイツの自動車ブランド、オペルが2021年に日本再上陸。
正規輸入としては、15年ぶりとなることで、ネットメディアを主体に大きな話題となっている。
一方、オペルというブランドが本当に日本に根付くのかについて、疑問視する声もネット上には数多く見受けられる。
本国ドイツでオペルに関する様々な取材体験をもとに、筆者(桃田健史)としての私見を述べたい。
第一の疑問。「なぜ、このタイミングなのか?」である。
最大の理由は、オペルブランドを統括するグループPSA(プジョー・シトロエン)の海外戦略の一環として「この時期になってしまう」ということだ。
グループPSAは2017年にGMから買収したオペルで、商品企画/設計/開発/部品購買/製造/販売/マーケティングなど自動車メーカーとしての事業を根本的に見直した。
買収時の企業としての状況が悪ければ悪いほど、見直し効果は目立つ。いわゆる、V字回復である。
まずは、オペルの主戦場である欧州市場での販売を強化し、シェア17%まで引き上げることに成功した。
次に狙うのは当然、海外市場だ。2020年半ばまでに、世界販売台数の10%を欧州以外とする目標を立てている。
そうしたなかで中国、アメリカに次ぐ世界第3位の日本史上に再上陸となるのは当然だ。裏を返せば、日本はその他大勢のひとつに過ぎない。
PSAのプチ成功体験、裏目に出ないか?
グループPSAとして、日本市場での近年の実績は確実に上昇している。2019年には過去5年間で年間販売台数はほぼ2倍となる1万6000台となった。
2019年末には、ミニバンのシトロエン「ベルランゴ」がネット販売が開始5時間半で完売したことが記憶に新しい。
「ベルランゴ」の兄弟車、プジョー「リフター」も根強い人気がある。
こうしたグループPSAの、日本市場におけるプチ成功体験を、オペルで焼き直すことが極めて難しいと思う。これが第二の疑問だ。
理由は単純で、シトロエンやプジョーなどのマイナーブランドがプチブームになっているのは、日本人にとって「普段ではあまり馴染みのないフランス車」だからだ。
さらに言えば、フランスには高級車ブランドが事実上、存在していない。
つまり、シトロエンやプジョーが「格下」という位置付けにならない。グループPSAにはDSブランドがあるが、日本では知名度が極めて低いことが、シトロエン/プジョーのブランドのポジショニングを結果的に助けている。
このような状況を鑑みると、オペルはメルセデス・ベンツ、BMW、アウディの「格下」というドイツ車ヒエラルキーから、結局抜け出せない。
さらに、日本市場ではドイツ市場主義、および最近のマイナー系躍進というトレンドの谷間に、オペルは位置している。