安くて人気の欧州車ブランド ダチア(DACIA)の強みはどこにあるのか?

公開 : 2022.07.21 18:25

ルーマニアの自動車メーカー、ダチアは手頃な価格のブランドとして欧州で親しまれています。物価上昇や電動化といった荒波の中、どのようにブランド価値を守るのか、今後のビジョンを探りました。

お手頃ブランドとして親しまれるダチア

ルノー・グループ傘下のダチアは、欧州で手頃な価格帯のラインナップを展開するルーマニアの自動車メーカー。あらゆる分野で物価が高騰する中、低価格へのこだわりを持ち続け、特に英国では強い支持を集めている。2021年は記録的な市場シェアを残したが、今年はそれを超える勢いを見せる。

ダチアの英国部門(Dacia UK)を率いるのは、ブランド・ディレクターのルーク・ブロード(Luke Broad)氏。ダチアがそのコアバリューを見失うことなく、荒波の自動車市場にどのように適応しているのか、英AUTOCAR編集部は独占インタビューでその答えを探った。

――ルノー・グループの一員であることにはメリットがあるのでしょうか?

ダチアは「低価格」をウリにするブランドで、物価上昇が続く英国でも注目を集めている。写真はジョガー(左)とサンデロ・ステップウェイ(右)。
ダチアは「低価格」をウリにするブランドで、物価上昇が続く英国でも注目を集めている。写真はジョガー(左)とサンデロ・ステップウェイ(右)。

「その通りです。現在UKチームは9人ですが、ルノー・グループの一員であるため、ここで一緒に働いている人は他にもたくさんいます。彼らは100%ダチアブランドに専念しているわけではありませんが、グループから全面的な支援を得ています」

――現在の経済状況の中で、販売台数は上がると予想されますか?

「それはないでしょう。しかし、以前よりも多くの人が、ダチアのことを検討するようになったのではないでしょうか。わたし自身、お客様とお話しすると、『ダチアのことはあまり考えたことがなかったけれど、地元のショールームに行ってみたら、素材の品質や価格に見合うだけのものがあって本当に驚いた』とおっしゃるのです」

オンライン販売における強みとは

――御社の小売ネットワークは、新しい購買層にどのように適応しているのでしょうか?

「2018年にDacia Buy Online(オンライン購入システム)を立ち上げ、今はその機能の強化に取り組んでいます。スタッフの手作業が非常に多いためです。すべての注文を手動で管理しなければなりませんし、当社のすべてのシステムにリンクされているわけではないので、最適な状態とは言えません」

「しかし、お客様の視点に立つと、すべてがライブで行われることになります。ディーラーシステムに統合されているため、オンラインで車両を設定し、ファイナンスの見積もりを取り、価格に納得したら購入する。途中で店舗に足を運んでも、ゼロから始める必要はないのです」

――ダチアはデジタル販売に適しているのでしょうか?

ダチアの英国向けラインナップは、左からサンデロ・ステップウェイ、サンデロ、ダスター、ジョガーの4車種。
ダチアの英国向けラインナップは、左からサンデロ・ステップウェイ、サンデロ、ダスター、ジョガーの4車種。

「他のブランドで見られるような、何百通りものオプションは用意していません。例えば、サブウェイでサンドイッチを注文しようとすると、どのパンがいいか、どのチーズがいいか、トーストがいいか、レタスとトマトがいいか……と30分も悩むことになります。しかし、当社の場合は、3つの仕様と2つのオプションという実にシンプルなラインナップなので、オンライン販売にとても適しています」

――御社の顧客の多くは、年配の方や地方に住んでいる方など、インターネットにあまり縁のない方々です。新しい購入プロセスを導入するメリットは何でしょうか?

「メリットという言葉は適切ではないと思います。わたしの両親は50代から60代ですが、他の人と同じようにアマゾンで物を買っています。お客様はネットで買い物をすることに慣れているんです。クルマは、コストや規制の関係で少し違いますが、わたし達もその流れに乗ることができればと思います。年齢や属性、性別などはあまり関係ありません。それが最近の人々の買い方であり、業界の方向性なのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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